心のサービスを私たちはホスピタリティと読んでいます。
それは、相手に対してのおもてなしの心であり、気遣いであり、思いやりの心です。
ホスピタリティ(Hospitality)の語源は、ラテン語の「友好的な、部外者」を意味する”hostis” と「歓待する者」を意味する”hospes”だと言われています。
このことは、ホスピタリティという言葉の根本が、「自分と異なる考え方・感じ方をする相手への敬意」にあることを教えてくれます。
自分の価値観を押しつけ、自分の感じるままに行動するのでなく、相手の考え方や感じ方の”違い”を、許容し、受け入れること。
それこそが、心のサービスである、ホスピタリティなのです。
それ故に、現代という時代における共存の論理、共生の倫理として、今ホスピタリティが求められているのです。
私たちは、人の心を覗いたり、読み取ることはできません。
たとえそれが微細であっても、仕草や表情、または筆跡や声色を通じて心を読み取ります。それは、心は「形」を通じてしか、理解されない、意味を持たないということです。
この「心の形」が、長い年月をかけて体系化され、人々に共有化されてきたものが「エチケット」と呼ばれるものです。
敬意を表す「形」が、お辞儀であり、親愛を表す「形」が、握手である様に。しかし、文化圏によってその「形」と「心」の繋がりは異なってきます。
例えば、日本の文化においては、初対面の人と握手をする習慣はまだ一般的ではありません。故に、場所、相手、機会に応じ、自らの心を的確に伝えていく振る舞いを選択していく必要があるのです。
この相手に自らの心を的確に伝える振る舞いこそが「マナー」なのです。エチケットをベースとし、臨機応変に心を形にしていくこと、それが形のサービスに他なりません。
形のサービスは、文化や世代、そして業種などの立場において、求められるものが異なってきます。
しかし、その根底にある心のサービスは変わらないものです。私たちが目指すのは、心のサービスを生み出す豊かな心の涵養、そして相手のことを徹底して考えることで生まれるやわらかで繊細なサービスです。
心と形のサービスが、高次で結びついた時にこそ、文化・世代・業種の垣根を超える本当のおもてなしが実現されるのです。